播州の小さな刃物が、遠くクロアチアの料理人の手に渡った。その出会いから今度は、クロアチア・イストリア地方のオリーブオイルが日本へ届きました。一本の肥後守から始まった物語の、続きです。
一本の肥後守がつないだ縁
物語の始まりは、市蔵本舗の肥後守でした。
クロアチア・イストリア地方の料理人、Outlaw ChefことDamjan Bistričić(ダミヤン・ビストリチッチ)さん。かつてクロアチアの首相や大統領のために料理をし、現在は若者たちに料理やアートを教えながら、自らの料理哲学「Art Brut Cuisine」を表現しています。
Damjanさんは、市蔵本舗の肥後守を見つけたとき、「このナイフは自分のために作られたものだと感じた」と語ってくれました。
以来、その一本は彼のポケットに入り、庭のハーブを摘み、家族の料理を作り、クロアチア・プーラの春祭りでは630人前のフリッタータの仕込みにも使われました。緩んだ鋲を自ら締め直しながら、今も使い続けてくれています。
道具をきっかけに、私たちは海の向こうにいる一人の料理人と、日々言葉を交わすようになりました。
今度は、クロアチアから日本へ
そんなDamjanさんが、次につないでくれたのは、故郷イストリアでつくられている一本のオリーブオイルでした。それが、Kristofola(クリストフォラ)のエクストラバージンオリーブオイルです。
Kristofolaは、クロアチア・イストリア地方でオリーブを育てる家族経営の生産者です。アドリア海に近いBale(バレ)の土地で、約7ヘクタール、2,500本のオリーブを育てています。
今回日本へ届いたのは、イストリアの在来品種Buža(ブジャ)からつくられた、2025年収穫のオイルです。低温で、機械的な方法によって搾油され、オリーブの実が持つ香りと風味を生かしてつくられています。
KristofolaのBužaは、NYIOOC World Olive Oil Competitionにおいて、2019年から2026年まで8年連続で金賞を受賞しています。今回届いたボトルにも、2026年の金賞を示すラベルが貼られていました。
公式には、オリーブの葉、ハーブ、アーティチョーク、アーモンド、トマト、リンゴなどを思わせる香りと、苦みと辛みの調和が特徴として紹介されています。
一本の刃物から、一滴のオイルへ
播州で生まれた一本の肥後守が、海を越えてクロアチアへ渡った。そこで一人の料理人の日々の相棒となり、料理や暮らしの風景を、私たちのもとへ届けてくれました。
そして今度は、その料理人がつないでくれた縁から、クロアチア・イストリア地方のオリーブオイルが日本へ届きました。
日本でつくられた刃物と、イストリアで育てられたオリーブオイル。形も、使われる場所も異なります。しかし、どちらも土地の風土と、つくり手の仕事から生まれ、人の暮らしの中で使われるものです。
一本の肥後守がなければ、私たちはDamjanさんと出会うことも、Kristofolaを知ることもありませんでした。小さな道具が海を越え、一人の料理人の暮らしに入り、そこから今度は、彼の故郷で大切につくられているものが日本へ届いた。この往復そのものが、一本の肥後守から生まれた文化交流です。
海を越えて、文化はつながる
文化交流というと、大きな催しや特別な取り組みを思い浮かべるかもしれません。けれど、その始まりはもっと小さなものなのだと思います。
遠い土地でつくられた道具を、誰かが日々の暮らしの中で使うこと。その人が、自分の土地で大切にされているものを、今度はこちらへ届けてくれること。道具を使う。言葉を交わす。互いの土地のものを知る。そうした小さなやり取りの積み重ねによって、土地と土地、人と人の間に、新しいつながりが生まれていきます。
播州の刃物と、イストリアのオリーブオイル。一本の肥後守から始まった物語は、一滴のオリーブオイルとなって、海を越えて日本へ帰ってきました。
けれど、これは物語の結末ではありません。二つの土地から生まれたものが出会ったことで、この物語は新しい章に入ったばかりです。この出会いから、これからどんな言葉や風景が生まれていくのか。市蔵本舗は、その歩みを大切に見つめ、伝えていきたいと思います。
Damjanさん、そしてKristofolaの皆さん。新しいつながりを届けてくださり、ありがとうございます。海を越えた一本の刃物がつないだ縁。その物語は、ここからまた始まります。