鉄道のレールの上に置かれた肥後守と小さなハンマー
鉄道のレールの上に置かれた肥後守と小さなハンマー。赤い組紐と侍の根付が、石畳の上で静かにぶら下がっている。

Outlaw Chefから、また一通のメッセージが届いた。

今回は料理の話ではなかった。

鋲が、緩んだ

毎日のように使い込んでいるうちに、肥後守の刃がわずかにぐらつくようになったという。

These days, during frequent use, the Higonokami wobbled a little at the junction between the handle and the knife.

「最近、頻繁に使っているうちに、柄と刃のつなぎ目で肥後守がほんの少しぐらつくようになりました。」

柄と刃をつなぐ一本の鋲——リベット。630人前のネギを切り、庭のハーブを摘み、パプリカを刻み、松の樹皮を裂き、IHコンロの梱包を開け、花を摘んでfarfalleの横に添えてきた、あの一本だ。毎日ポケットに入れ、夜はベッドサイドに置いて眠る。使い込まれて当然だった。

真っ赤なパプリカの上に置かれた市蔵本舗の肥後守
赤パプリカを切る。肉を切る。イチゴを切る。野草を刻む。毎日の台所で、肥後守は使い込まれてきた。

ここで、Outlaw Chefがとった行動が面白い。

「交換してくれ」とは言わなかった。「壊れた」とも言わなかった。

彼は、自分で直すことにした。

線路の切れ端を、金床にする

まず、地元の駅に行った。

プーラの線路の保守をしている作業場を訪ねて、こう頼んだ。「廃線になったレールの切れ端を売ってくれないか。」小さな金床——アンビルとして使うためだ。

次に、金物屋で小ぶりのハンマーを買った。

そして自宅に戻り、レールの上に肥後守を置いて、鋲を軽く叩いた。何度か、慎重に。一時間ほどの作業だったという。

Higonokami is stable again and functional as new!

「肥後守は再び安定し、新品同様に機能しています!」

送られてきた写真には、鉄道のレールの上に置かれた肥後守と、新しいハンマーが写っていた。赤い組紐の侍の根付が、石畳の上で静かに揺れている。

捨てずに、直す

この報告を読んだとき、素直に嬉しかった。

なぜか。

彼は肥後守を「消耗品」として見ていなかった。ぐらつけば捨てる。壊れたら新しいものを買う。そういう関係ではなかった。

自分で道具を揃え、自分の手で直し、また使う。

しかも、ホームセンターの棚から何かを選んだのではない。駅の作業場まで足を運び、線路の切れ端を金床にするという方法を、自分で考え出した。手元にあるものと、足で見つけたもので解決する。そういう人だ。

振り返れば、最初からそうだった。

肥後守が届いたとき、彼はすぐに刃の角度と開き具合を調整した。革ケースにはオリーブオイルとココナッツオイルを混ぜたものを何層か塗って、防水加工を施した。日本では椿油を使うのが一般的だが、クロアチアにはオリーブの木が豊かに茂っている。手元にある素材で、自分なりの手入れの方法を見つけた。

そして今回は、鉄道のレールで鋲を叩き直した。

オリーブオイルで革ケースを防水し、レールの金床で鋲を締め直す。日本の道具を、イストリアの暮らしの中にある素材で、自分なりに手入れしている。その土地の暮らしの中に、肥後守が溶け込んでいるということだ。

道具を直すと、道具は本当に自分のものになる

市蔵本舗が海外に刃物を届けていて、いちばん嬉しい瞬間がある。

それは、お客さんが道具を「自分のもの」にした瞬間だ。

買った時点では、それはまだ「商品」だ。使い始めて「道具」になる。手入れをして「相棒」になる。そして、壊れたところを自分の手で直したとき——その道具は、本当にその人のものになる。

Outlaw Chefの肥後守は、3月にこの連載で「日々の相棒」として紹介した。4月には630人前のネギを切り、IHコンロの梱包を開けた。同じ月に、花とfarfalleの料理のそばに静かに横たわっていた。

そして今回、彼は自分の手で鋲を叩き直した。

あの肥後守は、もう市蔵本舗が届けた「商品」ではない。Outlaw Chefの道具だ。彼の暮らしの一部であり、彼の手で育てられた一本だ。

Outlaw Chefの手帳に「Ichizo Hamono Honopo」の文字と、革ケースに収まった肥後守
Outlaw Chefの手帳に、「Ichizo Hamono Honopo」と書かれている。肥後守は革ケースに収まり、そのそばに静かに置かれている。

彼が以前書いてくれた言葉を思い出す。

Every moment of using this knife reminds us that every moment of our lives is valuable, original, and never repeated.

「このナイフを使うすべての瞬間が、私たちの人生の一瞬一瞬が価値があり、オリジナルで、二度と繰り返されないものであることを思い出させてくれる。」

道具を直す時間もまた、そういう瞬間のひとつだったのだと思う。

播州で鍛冶師が打った一本の肥後守が、アドリア海のほとりで、鉄道のレールの上で叩かれ、また新しい日常に戻っていった。

叩いて、締めて、また使う。

こういう瞬間のために、この仕事をしている。

Outlaw Chefの世界は、Instagramでも見ることができます。
@monsieuroutlawchef

Outlaw Chefの写真・言葉はすべてご本人の許可を得て掲載しています。