林檎がある。生ハムがある。
そして、ローズマリーの小枝。
クロアチア・イストリア地方の料理人、Outlaw Chef Damjan Bistričić(ダミヤン・ビストリチッチ)さん。イストリアのニュースサイト istarski.hr で、レシピの連載「Nedjeljna škola kuhanja(日曜料理教室)」を書いている。
2026年10月18日の回で彼が作ったのは、"Jabuka s dušom od pršuta i ružmarina"——「生ハムとローズマリーの風味を添えた林檎」。
ただの焼き林檎ではない。庭の木の実り、義父から分けてもらったオリーブオイル、そして彼の手元にある一本の肥後守。
それらが重なって、一皿になっていた。
組み合わせる、という答え
生ハムが好きだ。林檎も好きだ。そしていま、まさにこの二つが食べたい。
けれど、パンとチーズを添えるのは退屈すぎる——と彼は書く。
では、どうするか。
「Kombiniram ── 組み合わせてみよう」
昔ながらの探偵の口癖を借りて、彼はひとつの答えを出す。
林檎の中に、生ハムを隠す。
細く切ったプロシュートを林檎の内側に忍ばせ、串で留めて、アルミホイルで包んで焼く。
林檎と生ハムを結びつけるのは、オリーブオイル、緑胡椒、そして海塩。二つの素材を見届けるのは、190℃のオーブンで過ごす30分だ。
遊び心のある言葉の奥に、素材への確かなまなざしがある。
林檎は木から、オイルは家族から
使う林檎は、甘さと酸っぱさをあわせ持つ小ぶりなもの。
彼は自分の木から摘んだ。「みなさんは、お店で摘んでくればいい」と書き添えて。
オリーブオイルは、義父のヴァルディさんから分けてもらったもの。
特別な食材を探しに行くのではない。
庭の木と、家族の手から届いたものを使う。
Outlaw Chefの料理は、いつも暮らしの延長線上にある。
林檎を整え、香りを刻む
レシピには「よく切れる包丁で」とだけ書かれている。
けれど、写真の中で林檎のそばにあるのは、市蔵の肥後守だ。
皮を削ぐ。芯を抜く。香草を刻む。どれも大きな包丁の仕事ではない。
手の中に収まる小さな刃物が、いちばん得意とする仕事だ。
派手な場面ではない。けれど、こうした小さな手仕事の積み重ねが、焼き上がりの一口を決めていく。
アルミホイルをほどく瞬間
焼き上がった林檎にフォークを入れる。
甘酸っぱい林檎に、生ハムの塩気がしみ込んでいる。
そこに、緑胡椒とローズマリーの香りが重なる。
「Mamma mia! Ke gušti!」
「なんて美味しいんだ!」
イストリアらしい言い回しで、彼はそう声を上げる。
その味は、心の奥の満足へと続く道を示してくれる、と彼は書いている。
そして最後に、こう添えた。
「Dobar tek, dragi ljudi!」
「召し上がれ、みなさん!」
削ぎ落として、組み合わせる
丸い林檎を、四角く整える。
余分なものを落とし、必要なものだけを残す。
今回の一皿を見ていると、市蔵本舗が大切にしている「余計なものを削ぎ落とし、本質だけを残す」という考え方が、別のかたちで現れているように感じます。
そして、残したものを、いま手元にあるもので、自分らしく組み合わせる。
Outlaw Chefの料理は、いつも素材への敬意に満ちています。
その台所のそばに、播州の小さな刃物があること。
私たちにとって、それが何より嬉しいことです。
今回の料理の様子は、リール動画でもご覧いただけます。
元記事(クロアチア語):
istarski.hr「Jabuka s dušom od pršuta i ružmarina」
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@monsieuroutlawchef
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